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◼️なぜ「SORA」は画期的なアルバムと言えるのか? プロデューサー 小説家 榎本憲男
ジャンルに安住することなく、独自の活動を続ける安田芙充央が、画期的なCDを出しました。それが本作「SORA」 です。もちろん、まったく独自の技法などありえず、安田もまた伝統技法に則って創作しています。彼の技術的基盤は、大き くいえば、西洋クラシック音楽と、先鋭的なジャズでしょう(これもまた伝統の上に築かれているのですが、ここは敢えてこう 呼ばせてください)。 そして、もうひとつ安田にとって欠かすことのできないのが、映像や美術に対するヴィヴィッドな感受性です。この素養 は、フォトグラファーの荒木経惟と「アラキネマ」を舞台に、写真と音楽が拮抗し融合する空間を作り上げる際に大いに 発揮されました。僕などは安田の音楽を聴いていると、ほの暗い、黄昏時の、エロスのような妖気が漂よう生と死の淵、 例えば映画では、デヴィッド・リンチ、絵画ではエゴン・シーレやフランシス・ベーコンが思い浮かぶことがあります。
このような個性を見逃さなかったドイツ人のプロデューサーがいました。クラシックとジャズに跨がって活動し、なおかつインスタレーションなどの現代美術と音楽との接点を見出そうとしている、ステファン・ウインターです(レコードレーベル 「ウインター&ウインター」の主宰者でもある)。ステファンに招かれ、安田はドイツに飛び、初期 ECM 作品など多くの名 作 を 産 ん だ ド イ ツ の 老 舗 ス タ ジ オ 、バ ウ ア ー ・ ス タ ジ オ に て『 花 曲 』を 録 音 し ま す 。本 ア ル バ ム が リ リ ー ス さ れ る と 、 フランクフルター・アルゲマイネ紙が絶賛。同紙は、ドイツではよく知られた新聞で、わかりやすく表現すれば、日本の朝日 新聞や読売新聞にあたります。これらの批評をきっかけに安田は、クラシック音楽のイノベーターとして、ヨーロッパで注目 を浴びるようになり、以後、日本にいながら活動拠点をドイツに据え、ウインター&ウインターから、ピアノコンチェルト、ア コーディオンコンチェルト、エクサウディ・ヴォーカルアンサンブルなど計21枚のリーダーアルバム(このほかに参加した アルバムが11枚)を発表するに至ります。クラシック音楽の技法に立脚しながら、それを解体したり、脱構築する傾向の 強い現代音楽には向かわずに(横目で睨んではいるでしょうが)、自分の音や和音や音色を徹底的に模索するのが安田 の基本姿勢です。 さて、ジャズのほうは安田芙充央の中でどのように取り入れられ、昇華されているのでしょう。安田は、ジャズの技法で スコアを書くことには禁欲的です。しかし、実際、奏でられた楽曲を聴くと、ときおりジャズっぽい香りがふと漂うことがある。そ れは、参加しているミュージシャンが演奏するときの語り口として現れるのだと思います。その注目すべき語り部のふたり が、日本のジャズ界の大物ベーシスト井野信義、そしてベルギーで活動する新進気鋭のクラリネット奏者、ヨアヒム・バー デンホルストです。安田のディスコグラフィを覗くと、エリック・サティを独自の解釈で自分の作品に昇華した「Erik Satie: Musique D'entracte」と題するアルバムも見つかります。サティは、ドビュッシーやラヴェルと並んで、ジャズの和音やリ ズムに影響を与え、またそこからインスピレーションを得た作曲家だと目されていますが、ここに安田との共通点を見出すこ とができるような気がします。そして、そのサティ奏者として、また現代音楽のピアニストとして第一人者である高橋アキに 安田が献呈した「Mememto Mori」が、本年、老舗ジャズクラブの「エアジン」で初演されたというのも、西洋クラシック 音楽とジャズそして現代音楽をも視野に入れながら活動する安田芙充央らしい出来事だと思います。 さて、もうひとり、安田の音楽には欠かせないミュージシャンとして、ボーカリストのAkimuseも紹介しておかなければな りません。彼女の声は、ジャズでもクラシックでもない魅力を安田サウンドに与えています。彼女はなにをつけ加えているの でしょうか。それは人格(person)です。安田は、歌詞による明確な意味や物語を排除しつつも、Akimuseに声を楽器の ように奏でさせ、しかし、人の声ならではの、他の楽器にはない人格的な要素、登場人物のような色彩で染めるのです。 さらに本作では、新たにエレクトロニクスの技術が加わりました。コンピュータによるプログラミング、アコースティックな音 素材からのノイズ生成、音そのものを変質させるなどの技術が随所で駆使されています。かつて安田が参加していたの が、ノイズや自作の電気楽器を使う伝説的な前衛ジャズギタリスト 高柳昌行のグループだったことを考えれば、当然かも し れ ま せ ん 。し か し 、こ の よ う な 大 胆 な 導 入 は い ま ま で の 安 田 の 作 品 で は 見 ら れ な い も の で し た 。 冒頭で、本作は「画期的な」CDだと書きました。その斬新さは、四つの要素、クラシック音楽、最先端のジャズ、Akimuse の声による人格の出現、さらにエレクトロニクスの技法が溶け合うことで実現しました。「SORA」は新たな安田芙充央の 魅力が詰まった1枚です。そして安田のような独自の活動を続けるミュージシャンがほかに見当たらないことからあえて言 わせてもらえば、これは画期的なアルバムであると宣言したかったのです。 (文中敬称略)
◼️Compositions
1-SORA
2-Sky Lament
3-Fitari
4-Blady
5-Intolerance
6-Lost Era
7-Gig on the Stairs
8-Light in Ruins
9-A Mom’s Place
10-Mahoroba
11-Lucrezia
◼️total time: : 47:30
◼️Musicians
All Compositions and Arrangements by Fumio Yasuda
Piano , Computer , Percussions:Fumio Yasuda
Vocals : Akimuse
Bass Clarinet:Joachim Badenhorst
Acoustic Bass:Nobuyoshi Ino
Flute, Alto Flute:Dogen Kinowaki
Flute:Takako Hagiwara
Strings:Asian Art Strings
◼️アーティスト
安田芙充央・ギャレス・デイヴィス・エクサウディ
◼️CDタイトル
エケケイリア
◼️ Winter & Winter
◼️製品番号
Winter & Winter CD No 910 288-2
★ YOU TUBE
◼️収録時間
43分5秒
ピアノデュオの新境地
安田芙充央の新作2台ピアノアルバム。
珠玉のオリジナル11曲。
ジャズ・ピアニスト石井彰とともに。
■発売日:2023年1月25日(水)
■製品番号:POUR-1009
■価格:3000円(税込)
★ディスクユニオン
★タワーレコード
詳細はこちらをご覧ください↓
凛-RIN- ◼️アーティスト 安田芙充央 石井彰 (pourquoi.jp)
小沼純一作曲論集成(アルテスパブリッシング刊)が出版されました。
安田芙充央についての論文が掲載されております。
安田芙充央
「My Choice」
2,310円(税込)
レーベル /
Winter and Winter(ドイツ)/ 910 274-2
「現代作曲家の中の詩人」~作曲家・ピアニスト・安田芙充央(やすだふみお)。
本作は、彼の20年にわたるドイツWinter and Winterレーベルでの録音から自選したアンソロジーCD。
後期ロマン派のフランツ・シュミットやジョン・ケージの影響を受け、独特の美的エロティシズムを持つ安田の作品は、
詩的で美しいピアノ曲からジャズ、アバンギャルド、オーケストラ作品まで、境界を越えた美の世界を作り出している。
共演者はテオドロ・アンゼロッティ、テオ・ブレックマン、エルンスト・レイスグル、バーゼル室内管弦楽団など一流揃い。ソロピアノもいくつか収録されており、安田のピアニストとしての素晴らしさも再認識させてくれる。
ヴェルディ、サティ、マザーグースにおける、魔法のような彼のアレンジ作品も聴きもの。
安田芙充央の多面的な世界がコンパクトに一望できる貴重な1枚。
The Ninth Wave - Ode to Nature
ヨーロッパ初演が成功裡に終わりました。
Dec 19th, 2020, 20:00 (ヨーロッパ時間)
LIVE PERFORMANCE STREAMING at Schwere Reiter in Munich
Sound- and Film-Art with live performance
下記リンクでオンデマンド配信されています。
どうぞご覧下さい。
https://youtu.be/GqP4wuaI3FQ
The Ninth Wave - Ode to Nature
Fumio Yasuda(安田芙充央) 作曲
Stefan Winter(ステファン・ウィンター) 脚本・監督
Piano for four Hands: Ferhan & Ferzan Önder
Clarinet: Joachim Badenhorst
Bass Clarinet: Gareth Davis
Viola: Kelvin Hawthorne
Viola: Klaus-Peter Werani
Conductor: Aarón Zapico
Sound and Noise: Mathis Nitschke(https://mathis-nitschke.com) & Stefan Winter
*Production: Mariko Takahashi for Neue Klangkunst gGmbH
「数日前にミュンヘンでこのプロジェクトをリードする幸運に恵まれました。 カタルシスがある、情熱的で、刺激的で、そして何よりも、とても個性的です。 それは喜びであり、冒険であり、演出ができることへの挑戦でした。 楽しんでいただければと思います」
指揮者:アーロン ザピコ
22:41 Ferzan
初めて譜面を見た時は信じられない!とても弾きこなせない!と思いました。
Fumio Yasudaはとても素晴らしいジャズピアニストでもあり作曲家でもありま す。その安田さんに直接連絡を取り、相談をしたりして一緒に取り組みました。 彼とのコラボレーションはとても上手く進み、素晴らしかったです。彼は「何で もありです。自由に取り組んで下さい。」と言ってくれました。家で練習してい る時も緊張感がありました。
24:51
我々姉妹はとても仲良しですがこの作品では音楽的に(スコアの中で)戦ってい ました。私が優しくメロディーを弾いているところをこういう風にフェルハンが ガンガンと入ってきたり。。。まさにこの作品のコンセプトでもあるように(人 間と自然との)「戦争」なのです。
26:51 Aaron
ベートーベンは革命でした。そしてここでFumioが作った新たな曲と合体される のもまた小さな革命であると言っていいと思います。
(内容の一部-訳)
~東京出身のピアニスト・作曲家である安田芙充央については、科学的に引かれた音楽ジャンルの境界線を無視することで、「Winter & Winter」の哲学を理想的な形で実現していることが読み取れます。この点で、彼の選択は、非常に幅広い関心事とその関係性を示しています。ジャズ・ピアニストとしての彼の腕前は、「Kakyoku(花曲)」でのソロ、「レイン・ランドスケープ」でのオノマトペによるヴォーカルやクラリネットの声との共演、また、バス・クラリネット奏者のヨアヒム・バーデンホルストが自由に装飾を施したエリック・サティの「Vexations」バージョンではプリペアド・ピアノで体験することができます。オーケストラ的には、「リディアの歌」に強烈なソプラノ・カンタスをつけたり、テオドーロ・アンゼロッティに捧げた「アコーディオン協奏曲」の「ラスト・コラール」に不吉な不協和音ブロックを配置したりしている。彼はスピリチュアリティを重視しているようです。〜
-ハンス・ディーター・グリュンフェルド-
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